記憶デザイン事務所 追憶堂

はじまりのジャメヴ

「……そのジャメヴっていう言葉は、この仕事に関係あるんですか」

「ある。覚えておいて欲しい。
人の記憶を扱うこの店では、大事なキーワードなんだ」

「キーワード、ですか」

「ああ。 記憶をダウンロードする時にさ、
うっかりオリジナルの記憶を消してしまったら、大変なことになるからね」

なるほど、それ怖いな。
もしもキーボードの操作一つで、大切な想い出が消えてしまったら…

考えただけでゾクリと身震いする。

たとえば、昨日一日の記憶を削除してしまったら…
あたしの中で『昨日』という日は、なかった事になる。

それが例え、現実に存在した一日なのだとしても。