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僕の世界は単純だった。
そう、裏切りだ。
でも早すぎた。
裏切るために必要な信頼ができる前に、僕は人にうそをつく。
これはやります。
あれはやりません。
同じような嘘をたくさんついてきた。
周りもそうなのだろう。
でも、そんな気休めはいらなかった。
僕の世界には僕だけがいればよくて
ほかならぬ可変長符号は僕が作り出した分身に過ぎないのだから。
「えりな、イーテマーヴを起動してほしい」
えりな。
ずっと、幼児のころからイメージが変わらない、えりな。
僕はたくさんの秘密を、君の中に残してきてしまった。
だから会いに行く。
君に貸しておいた物語の知識を、凶器を、殺しみを、返してもらう。
だって君は分身だから。
君は僕だから。
移動に意味はない。
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