錯覚

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拝啓 ユアサへ この手紙は、きっとあなたに届くでしょう。 なぜならあなたは、私のストーカーだから。 私がどんな場所でつぶやいても、あなたには届いていることでしょう。 新作の小説、もちろん拝見させていただきました。 いいえ。 私はあなたの小説は、すべて読んでいるんですよ。 未成熟の誘惑 殺人オフ会 そしてなんでしたっけ、最新の最高傑作? Death off back up でしたっけ? あんな些末な文章を世に送り出すなんて、あなたはやっぱり異常です。 さて、本題に入りましょう。 私を殺すのは、ちょっとやめてはくれませんか? あなたの人生の登場人物でしかない私を殺すことに意味はありませんよ。 もっと大事な人がいるはずです。 考え直してください。 思い出に浸らないでください、ストーカーさん。 あなたのことはよく知っています。 だってあなたは自分のことをすぐネットに公開するんですから。 SNS、新着アプリ、新着ゲーム。 よくもまあ人の名前をいろんなところで公表してくれますね。 私がいま働いている場所にまで、未成熟の誘惑を知っている人がいて驚きました。 あの作品、私は個人的には好きなんですけど、ヒロインが私じゃないのがちょっと気に食わないですね。 どうせあれでしょう。 あなたの初キスでも奪った人なんでしょう? きやさんってひとは。 あら、これでは私があなたのストーカーみたいじゃないですか。 そんな。 でも、本題は忘れないでくださいね。 私は殺さないでください。 お願いします。    敬具
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