不可侵聖域

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 愛していたのは人形。  ボードに貼られたのは愛しい彼女の写真。撮って、撮って、撮りまくって。通学路やら職場やら、小学生から社会人に至るまで。撮り溜めた枚数はもうわからない。  恋をしている。  初恋だった。小学二年生のときに明確な感情を知った。小学校に入学してからよく遊ぶようになっていたけど、これを恋と呼ぶと知ったのは一年経ってから。  自分に向けられる笑顔が太陽のように輝いて。  僕はその笑顔に恋をしたのだ。  はじめは一緒にいるだけで良かった。太陽のような微笑みを僕に向けてくれるなら。最高の笑顔を見るだけで心がぽかぽかする。それだけで良かった。  笑顔をいつでも見られるように、写真を撮り始めた。彼女にお願いする勇気はなかったから、こっそりと。小学校に入学してからずっと一緒だから、通学路や登下校の時刻はわかっていた。  撮るだけで良かった。写真の彼女は僕に笑いかけていたんだから。
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