不可侵聖域

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 後をつけた。  夜道の一人歩きは危険だ。彼女は可愛くて明るくて人気者だから、誰かが守ってあげないと。武器を持つこともない平和ボケしたこの国で、彼女を守るには見守ることが一番。  君を傷つけるものは僕がやっつけるよ。  そう思ったのが中学生のときだった。  高校は君が行きたいと言った学校にした。君を守るのが僕の使命だから。武器も持たない、腕っぷしも強くない僕はでも、君の隣で戦う王子様には不似合いで。君を守れる人になりたかったから、運動もしたし身体も鍛えた。  華奢な君を守る騎士に僕はなれただろうか?  高校を卒業するとき、君はそのまま就職すると言った。僕も同じ会社に入りたかったけど、それは叶わなかった。  ずっと一緒にいた僕らの、はじめての別離。  君はあの、太陽みたいな笑みをしていた。小学生から変わらない。僕に笑いかけてくれる。君は本当に明るくて、優しくて、汚れを知らない天使みたいに。  僕はそんな君を、手放すというのか。
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