不可侵聖域

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「ガッ、ア……!」 「僕はね、君の王子様なんだよ」  腕の中に恋い焦がれた君がいる。触れたくても叶わなかった、清涼な君が。  僕に押し倒され、首元を押さえられ、君の鼓動を感じるためだけに身体を重ねている。むろん、やましいことは微塵もなく。 「ああ、君に触れられるなんて夢のようだよ。僕はずっと君を見ていたんだよ? 君が大人になって、僕を好きだと言ってくれるまで待とうって。君の笑顔を守れる男でいようって」 「た、す……け……ッ」  君を助けるのは王子様である僕の仕事だよ。  君のために鍛えた身体は、たおやかな姫である君を捉えて放さない。君の腕はあまりに細く、僕の身体を押し退けることはできない。 「好きだよ。だから君も好きだと言ってよ」 「誰か………、助けてッ……!」  切れ切れにあがる声は、僕の望む言葉ではない。悲鳴とも思えない、雰囲気にそぐわない言葉をなぜ君は続けるの?
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