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「いらっしゃいませー!」
お店の扉を開くと思っていたよりも元気な女性の声がナギの耳に届いた。
ナギは一瞬ビックリしたがウェイトレスはそんな事はお構い無しで次の言葉を掛けた。
「何名様でしょうか?
と言うかどう見ても1名様ですよね
こちらにご案内しまーす」
「えっあっはい…」
1名で合っているので反論はしないが、随分と雑な接客に少し戸惑うナギ。
こんなものなのだろうかと首を傾げつつウェイトレスの後を付いて行く。
お店の中はテーブル席とカウンター席になっており、数は少ないが何人かお客が居る様だ。
そして、ナギはカウンター席に案内された。
「ご注文が決まりましたら、そこのマスターに言って下さいね」
「は、はい」
ニッコリと笑うとウェイトレスはテーブル席へと向かった。向かう先を辿るとその席にはローブを着た男の子が1人で座ってハンバーグを食べて居た。
(子供?なんであんな小さい子がこんな所に…)
ボブくらいの長さの綺麗な銀髪にキラキラとした黄金色の瞳をした可愛らしい男の子。見る人によっては女の子にも見える。
そんな男の子は地に足が着いておらず、ブラブラとしている。
こちらからは後頭部が見えるだけで分からないが、テーブルの横で目線を合わせる様に膝を曲げたウェイトレスが何か言ったのか男の子はウェイトレスに向かってニコニコしながら頷くと口を動かして何か言って居るのが見えた。
「今、溺愛中なんだよ」
「わっ!」
急に話しかけられナギは心臓が飛び出しそうになって飛び上がった。
そして、声の方を向く。
「すまない、ビックリさせたか」
「ぃ、いえ」
声の方を向くとそれはカウンターの中に居るマスターだった。白髪混じりの黒髪に眼鏡をした少し強面の年配の男性だ。申し訳なさそうに眉を八の字にしている。
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