第1話 セカンドタウン

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  「マスター、ごちそうさま! すごく美味しかったぞ!」 「!」 注文した物が来て食べ始めた頃、左横から声が聞こえてナギは横目で見た。 その声の主は先程までテーブル席に座って居て、声も聞こえなかったあの男の子。 近くで見ると余計に可愛らしい男の子で頑張ってカウンターに上体を乗せてマスターに言って居た。 「おう、そりゃ良かった」 「じゃあボク、上で寝るから おやすみ!」 「ああ、ゆっくり休め」 マスターの言葉を聞くとカウンターから降りてお店の奥へと男の子は入って行った。 「なんだか…そう、綺麗な人形みたいで 見てるだけでドキドキしますね、あの子」 「子供らしさの中にある気品さと言うかなんと言うか… あの感じだと絶対どっかの貴族の子供っぽいんだが なーんも言わねぇんだよな」 「何か嫌な事でもあったんですかね? 名前は?」 「名前は確か、ルクエラだったか まっ面倒見る分には別に構わねえんだが、事情ぐらいは知りたい所だな」 「そうですよね」 「そういや、兄ちゃんは旅人だろ?」 「はい、そうです」 「難しいかもしれねぇがアイツの家族とか…なんでもいいから旅先で見つけて欲しいんだ あくまで旅のついで、だけどな 分かったら文を寄越してくれりゃあいい 初対面のこんなおっさんが図々しく頼む事でもないんだが、俺が探すにも限度がある 厚かましくて悪いが頼まれてくれねぇか?」 「お、俺なんかで良いんですか? まだ旅を始めたばかりでこれからどうなるかも分からないんですけど…」 「兄ちゃんになら頼める! 俺の勘がそう働いてるんだ まぁ無理にとは言わないけどな これは、ルクエラと俺達の問題だし」 これが勇者の力と言うべきか、初対面にも関わらず、マスターはナギを驚く程信頼して居た。 そんなマスターにナギは頭を掻いた。  
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