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『ユウ』と呼ばれたその男は、一か月くらい前に恋人と別れて、その相手を忘れさせてくれる人がほしいとオーナーに話していたらしい。俺の事は『一度男と付き合ってみたい大学生』と説明されたと笑っていた。その先、恋愛に発展するかしないかはその時考えるとして、まずは体の相性を確かめ合おうと誘ってきた。ユウに対して、以前俺を誘ってきた男に感じたような嫌悪は無い。逆にユウが俺の下でよがる姿を想像しただけで、既に興奮し始めていた。
ホテルのベッドに横たわるユウの姿は綺麗だった。すらりと伸びた手足。男の体なのだからそこそこの筋肉がついていて、あたりまえだが胸は無い。その体に俺はしっかりと反応した。男と肌を触れ合いキスをしても何の嫌悪も湧かない。それどころか、もっと触れたいと思った。ユウにリードされ繋いだ体は快感に溢れ、こらえきれずに勝手に果てた。男相手が初めての俺を、うまくリードするだけの余裕のあったユウは、それだけの数の相手をこなしてきたのだろう。しかし、初めて知った興奮と快感に取り憑かれた俺は、ユウとのセックスにどっぷりと溺れていった。
「俺達、そろそろこの関係を終わりにしないか。」
初めてのセックスから二カ月くらいの頃、突然切り出された。
「どういうこと?」
俺は訳が分からず問い返した。二人の関係は悪くなかったはずだ。
「俺、セックスだけじゃなく、俺自身を愛してくれる恋人がほしいんだ。お前は俺と会えばセックスばかりだ。それに、二か月もいっしょにいて、俺の本名や年齢、仕事、プライベートな事を何ひとつ聞こうとしない。お前は俺に対してセックス以外に興味がないんだ。そりゃそうだよね。男とセックスが出来るか試しただけだものな。わかっただろ。お前はゲイだよ。もう、いいだろ。俺はお役ごめんだ。」
そう言われて、俺は何も言い返せなかった。確かに会えばセックスばかりだった。それ以外のユウに興味があるかと聞かれたら、迷わず有ると答えられる自信が無い。これじゃ恋人とは呼べない。ユウの言うとおりだ。
俺はショックで言葉も無かった。ユウはそれきり連絡も寄こさなかった。
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