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 数日後、オーナーとマスターにお詫びを入れに行ったら、既にオーナーもマスターも事情を知っていた。二人は俺を責めもせず、別の人を紹介しようとしてくれたが、またユウの二の舞になるからと断った。  その後、オーナーの店に顔を出すようになると、ゲイの友人が何人かできた。その友人の一人が引っかけに行くからと、無理やり俺を出会い系のバーに連れて行った。  そこでは、男たちが気軽に声をかけては二人で消えていった。  俺は友人と離れて一人、カウンターに座っていると、綺麗な男が近づいてきた。 「お兄さん。もう、今日の相手は見つかった?俺、まだなんだけど、どう?」  そう言って、カウンターに肘を置き軽くもたれかかった。  ああ、そうか。今夜一晩の相手を見つける店なのか。最初から体だけと言われているのが、その男のセリフから分かった。お互いに体だけ、一晩だけと納得しての関係というものがあるのだなと、その時知った。結局俺は、その男と寝た。ユウとのセックス程の快感は得られなかったが、そこそこ満足して、その男とは別れた。その男はすんなりと帰って行った。電話番号もメールアドレスも交換すること無く。  その後、俺はちょくちょく、そういった店に出入りするようになった。お互い一晩限りと割り切った相手を見つけてはホテルに行った。そうこうするうち、俺は一人の男と関係を持った。しかし、その男はその後俺の前に何度となく現れ、付きまとうようになった。どうやって調べたのか分からないが、大学にまで現れるようになり、俺は危機感を覚えた。もう少しで大学も卒業し、就職するといった大学四年の冬だった。大学の友人や会社にゲイだと知られたくなかった。その為、俺はその男から必至で逃げていた。しかし、ちょっとした油断から、大学の門でその男に待ち伏せされてしまった。
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