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「そんな生活が何年も過ぎたある日、春樹と出会った。」  俺の話をジッと聞いていた春樹の肩がビクリとした。俺の手がそっと頬に触れたからだ。 「俺は一瞬で心を奪われた。久しぶりに目の前で見たスライディングは鮮やかで、その青年は屈託のない笑顔を見せた。」  春樹は頬を紅潮させ潤んだ瞳で俺を見詰めた。 「その頃の春樹はこんな顔を見せたりはしなかったのにな。」  春樹はフイッと視線を反らした。 「こんな顔って、どんな顔ですか。俺はいつもこの顔です。」 「どんな顔って、こんなに物ほしそうな顔をして。そんな顔、俺以外の前で見せるなよ。」  春樹は益々顔を赤らめ俯いた。俺は春樹の頬を両手で覆い自分に向かせた。 「春樹と出会って、俺は初めて愛する事を知った。春樹と出かけて、いろいろな春樹を知れば知るほど自分に欠けた部分を補ってくれる存在のように思えた。ははっ。春樹に触発されて、年甲斐もなくはしゃいだりもしたな。また、バッティングセンターに行こうな。」  春樹はニッコリと微笑んだ。 「沖縄旅行は楽しかった。無理やり連れて行って悪かったと思っている。でも、あの場所にはどうしても春樹に付いて来てほしかった。勝美への贖罪だけでなく、それまで悩んで来た事、全てを過去の物にして、お前に付き合ってほしいと告白しようと思っていた。いつ告白しようかと迷っていた矢先に、お前が俺に欲情している事に気が付いてしまって、我慢出来ずに抱いてしまった。翌朝、目が覚めて気付いた。告白しないまま抱いてしまった事を、俺はとても後悔した。」  春樹はハッと目を見開いた。 「もしかして、それで・・・。俺が目を覚ましたら、智樹さんは普段、俺の前では吸わない煙草を吸っているし、気まずそうに眼を反らしてしまったので、俺はてっきり抱いた事を後悔しているのだとばかり。」
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