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「後悔した。すごく後悔した。一大決心をして、沖縄くんだりまで出掛けて、絶対にNOと言わせないシチュエーションをさりげなくプロデュースして、スマートに告白する予定だった。それから愛を確かめ合うように抱き合いたかった。それなのに、先に体の関係が出来てしまったから、告白しても責任をとってしょうがなくみたいに思われそうで、再度告白プランを練り直さなくてはならなくなってしまった。それに、お前の気持ちも聞かないまま抱いてしまったから、翌日のお前の態度があまりにもあっさりとしていて、お前にとって俺はただの性欲処理の相手かもしれないと不安だった。」  俺は春樹の両二の腕を掴み、訴えかけるように話した。 「確かに、あの時は男同士でどうこうなるなんて想像もしていませんでした。なのに、智樹さんの裸を見て、欲情してしまって、そんな自分に驚いて動揺している間に、訳が分からないまま抱かれてしまいました。」 「じゃあ、俺に抱かれて嫌だっただろう。」 「いいえ、全然嫌じゃありません。むしろ嬉しかった。だから、俺は智樹さんの事が好きだったんだと自覚しました。でも、翌朝、智樹さんは気まずそうにしているように見えたので、その事に触れちゃいけないと咄嗟に思ったんです。でも、どういうつもりで智樹さんが俺を抱いたのか分からなくて、とっても不安でした。このまま無かったことにされてしまうのが嫌で、もう一度抱かれれば、智樹さんの気持ちを自分に向けられるかもしれないなんて考えて、無理やり迫ったりしてしまって・・・。」  浴室で俺を押し倒すといった大胆な行動に出た事を思い出したのか、春樹は益々顔を赤らめた。 「俺が何も言わなかったからだな。すまなかった。」 「誤らないでください。聞けば済む事を聞かずに勝手に解釈して、不安がっていたのは俺ですから。」  春樹は首を横に振った。 「俺も直ぐに告白すればよかったんだ。なのに、告白した経験が無かったから、あれこれ考えすぎてしまって。東京に戻っても、沖縄旅行の為にスケジュールを調整したから、その後のスケジュールに余裕がなくて、次の約束を取り付ける事も出来なかった。」
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