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「もしかして、別れ際の余所余所しい態度は、それが理由ですか。俺はてっきり沖縄での事は無かったことにしたいのかと・・・。夢の中からいっきに現実に引き戻された気分でした。」  春樹の表情がくるくる変わる。今度は期待と不安の入り混じった表情を見せた。 「その後だったな。調査書を突き付けて春樹を罵倒してしまったのは。好きな相手に誤解されて罵られて、辛かっただろう。」  そうだ。あの調査書を見て、俺は春樹に騙されたと思った。名前を偽って、俺に近づき、恋人を装った詐欺か復讐だと思った。俺は本気で春樹を好きになっていたから、余計に怒りが湧いた。 「誤解されて辛くなかったといえば嘘になるけど、その時には、自分が春樹だと分かっていたので、不安や期待ではなく、親子で関係を持ってしまった罪の意識の方が重く圧し掛かっていました。」 「罪・・・。」  常識的に考えれば、親子で関係を持てば、罪の意識に苛まれるだろう。 「いつ頃、思いだしたんだ。」 「沖縄旅行の最中に、一瞬、波に攫われた時に『春樹!』と呼ばれるイメージが浮かんだんです。でも、それが自分の過去と直ぐに結びつかなくて。病院で母に指摘されて、自分の本当の両親が誰なのか、はっきりさせなければならないと思って、新聞を調べたんです。養母には交通事故の車両から救い出されたと説明されていましたから、最初は交通事故の記事を探したんです。ダメモトでしたけど、たまたま、事故で停電が起きていて記事になっていました。事故車両から男女の遺体が見つかって、名前もそれで分かりました。それが両親だろうと思ったんですが、もしかしたら、似たような事故が他にもあるかもしれないと近日の記事を探したら、誘拐事件の記事が見つかって、両親だと思った男女が犯人で、智樹さんが父親だと分かったんです。」  春樹はギュッと拳を握った。
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