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「つ、連れって……彼女さんですね? わかりました、見てきます!」
うん、彼女がいて当たり前だ。
他人様の彼氏さんに一瞬でも見とれてしまうなんて失恋女王のあたしがオコガマシイ、ゴメンナサイ。
恥ずかしさのあまり慌ててトイレのドアに体当たりすると、いきなり彼があたしの手をギュッと掴んだ。
(……っ!? 男の人に手ぇ握られたーー!?)
「どこいくんだ。こっちは男子トイレだぞ」
綺麗に引き締まった薄い唇が目の前でそう囁いて、あたしの顔がさらにボッと熱く燃える。
中学時代、彼氏ができたらやってみたかった事ナンバー2がこれだった。
結局叶わなかったけれど、今あたしは初めて男の人に手を握られてる――!(色々違うけど)
「別に慌てなくていい。あいつにはよくある……こと……。……」
彼が眉根を寄せて、あたしの手を握ったままの自分の手をじっと見つめる。
そしてその視線をゆっくりとこちらに向けた。
「……あんた……」
「ひゃい……なん、でしょう……?」
ドキドキ脈動とザワザワ動揺が、あたしの手からこの人に伝わってしまいそう。
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