虎と龍とにゃんにゃんと

9/47
前へ
/339ページ
次へ
「あ……あの、あたし。あなたの彼氏さんに頼まれて様子を見に来たんです……」 「彼氏……? ああ、己龍(きりゅう)のこと。外にいるの?」  美少女は物憂いため息を一つついて、横になっていたカウチの上に起き上った。 「は、はい。待ってるみたいですけど……大丈夫ですか。顔色、良くないよ?」  元々色白ではあるのだろうけど、それにしても青白い。 「うん……いつもは少し休めば楽になるんだけど、なんか今日はダメ……」  同い年くらいだろうか。ばっちりメイクしてるから確信はできないけど。 「帰ってお家で休んだ方がいいと思う。動けそうにない?」 「そうしたいんだけど、力入らなくて……」  辛そうに頭をもたげて目を閉じる様子がなんとも痛々しい。可愛い子がこんな風に儚げな風情でいると、男じゃなくても何とかしてあげたくなってしまう。  あたしは彼女の隣に腰を下ろして、その背中に腕を回した。 「あたしが支えて歩いてあげるから。なんとか彼氏さんの所まで……!」  ぷちゅ。 (あぅ……!?)  倒れ込んで来た彼女の唇が、あたしの上唇に重なった。  ぱちっと開いた大きな瞳とあたしのドングリまなこが、数センチの距離で交錯する。
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加