そうだ、トーキョへいこう

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 吐き捨てられた言葉が痛い。でも、怒らせたならごめんなさいって言うべきなのかな。 「ほんとキモいわ、そういう女。でもまあ、いつかバカな男は引っかかるんじゃね? お前、ゲロブスってわけでもねぇし」 「あ、ありがと……」  あれ? お礼言っちゃった。     踵を返し小走りで遠ざかっていく彼の後姿を見ながら、あたしはトンと体育館の壁にもたれかかった。  中学に上がって間もなくブームのように恋バナが咲き乱れ、友達はみんな告白したりされたりで意中の人と付き合い始めた。 『夕愛も早く好きな人作りなよ』なんて言われても、工作じゃあるまいし、とその頃はまだ笑っていたと思う。  しばらく経ったある日、当時仲の良かった男子が階段を踏み外して足を骨折してしまった。サッカー部だった彼は練習に出られないと言ってひどく落ち込んで……。  松葉杖にもたれてションボリと校庭を見つめる姿が切なくて、痛々しくて、気が付いたら「あたしと付き合ってください」と言っていた。  ……それが始まり。  次は、赤点をとって職員室で先生にキツく叱られてるのを見てしまった、一つ上の先輩。  その次は確か、失恋してこの世の終わりみたいな顔をしてた隣のクラスの男子。  どうやらあたしは男の子の『元気がない、落ち込んでる』姿に弱いらしい。
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