そうだ、トーキョへいこう

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 そういう人を見ると、寝ても覚めても 『慰めてあげたい』 『抱きしめてあげたい』 と思いつめるようになってしまう。  母性が異常に強いのか、それとも不幸フェチとかそういう心の病……?   (……いやいや、分析してる場合じゃないでしょ。告り魔なんて、そんな噂が立ってたんだ。どどどどうしよう……!)  見上げれば、いつの間にか深々と降り出した信州の雪。  大好きな景色だけれど、この土地ではあたしは男好きのド変態女として名高い……。 (ダメだぁ……ウチの武石中と二中だけじゃなくて、きっと長野の全中学校で『告り魔、夕愛』って本当にあったキモい話が知れ渡ってるんだ。春から高校生になってもあたし……!)  その時、灰色雲に覆われた東の空に、フッとスポットライトのような細い光が差した。 (……県外の高校、受験してもいいかなぁ……)  お父さんは反対するだろうけど。  お母さんはとっくに亡くなってるし、あたしが居なくなったら一人ぼっちで寂しい思いをさせてしまうだろうけど、でも……。 (ここにいたらあたし、ずっと彼氏なんかできないぃぃ……!)  雲の切れ間から降りていた光の帯がパアアァッ……とオーロラのように広がる。  まるで『ココヘオイデ』と導くように。 「東の空……」  そうだ。  トーキョへ行こう。
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