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王さまにはじめて会ったそのとき、わたしはふつうの小学生でした。
「ねぇ、王さま、王さま。どうして、ショベルカーに乗ってるの?」
赤いランドセルを背負った私が出くわしたのは。
雑草の生い茂る道をふさぐ、黄色いショベルカー。
ショベルには、はぎとられたような土の上に、赤い前掛けをつけたお地蔵さまがころんと転がっている。
そして、ショベルカーに乗っていたのは王さま。宝石みたいにきれいな王さま。
ブルーサファイアのような瞳がゆっくり動く。
転がる地球みたいに。
「……工事をしている」
面倒くさそうな答えが降ってきた。
王さまは大きな瞳を隠すみたいにまぶたを重たそうに半分くらい下げている。サラサラの金髪の上には王冠がななめにのっかっていた。
「どうして工事するの?」
「……知りたがりなうさぎだな。うさぎは黙って愛嬌をふりまいて飛び跳ねておればよい」
「わたし、うさぎじゃないよ」
「長い耳があるではないか」
「もしかして、これのこと?」
わたしは自分の髪の毛をつまんで持ち上げてみせた。
左右の頭の上で二つにたばねた髪型、ツインテールだ。 それが王さまにはうさぎの耳に見えるらしい。
「余にはうさぎにしか見えぬ」
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