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と言いながら王さまが運転席の黒いレバーを動かした。 ショベルの中のお地蔵さまがグイーンと高く持ち上げられていく。
「ねぇ、どうしてお地蔵さまを工事するの?」
「余はつまらぬものがキライなのだ。つまらぬものは処刑する。それが余の法だ。だから、この地蔵は絞首刑だ」
王さまはサファイアの瞳を横に動かした。
「この地蔵を見よ。これまで、なんとつまらなそうに立っていたことか。こんなものは無いほうがよい。見る者が不快になる」
「そうなのかな?」
おさないわたしは首をかしげる。
「ねぇ、そんな工事なんて王さまの家来にやらせたらいいのに。王さまに家来はいないの?」
すると、王さまは答えた。
「昔はいた。だがそんなつまらないものは処刑した」
「そうなの」
しばらくして、わたしはまた聞いた。
「王さまに大臣はいないの?」
「昔いた。だがそんなつまらないものは処刑した」
「そうなの」
しばらくして、わたしはまた聞いた。
「王さまにお妃さまはいないの?」
「昔いた。だがそんなつまらないものは処刑した」
「そうなの」
しばらくして、私はまた聞いた。
「じゃあ今、王さまの周りにはだれがいるの?」
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