第1章

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「余の思ってたよりうさぎの芸は面白かった。玉乗りしながらお手玉をしたりマジックをしたり、話術も交えて余を楽しませた。だが、それにもやがて余は飽きた。うさぎの芸がネタ切れになると、余はつまらん、と正直に言ってやった。そして、その次の日になるとうさぎは死んでいた。誓いのとおり首を吊ってな」  律儀なやつだった、と王さまはつぶやいた。  さわさわと風に草が揺れている。  わたしの髪の毛もクシャクシャ揺れる。  ああ。王さま。  それでひとりぼっちなのね。  かわいそうに、かわいそうに……。 「さて。余はここら一帯を工事しなければならない。つまらぬ会話はしまいにしようぞ」  王さまがショベルカーに乗ったまま行ってしまう。 「ああっ、王さま、まって!」  わたしは叫んだ。そのとき。  前を進んでいたショベルカーが、ガクッと大きくななめに傾いた。  草むらにまぎれていた土手にタイヤが落ちてしまったのだ。王さまがショベルカーの運転席から転げ落ちた。  五メートル下には、コンビニのコンクリートで覆われた駐車場があって、立ち入り禁止のワイヤーロープが張られている。  そこへすべもなくただ落ちていく王さま。  続いて。
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