1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだろうか。……ところでうさぎよ。おまえが首にまいているそれはなんだ? マフラーではないな」
私は首をかしげて笑った。
「ロープの“わっか”だよ。おうさまのショベルカーにさきっぽが出てたから引っ張りだしてみたの。ちょうどわたしの頭にすっぽり入ったよ。ほら」
そう答えたとき、わたしはバランスを崩して、後ろに倒れた。
ロープの先はショベルカーに結んであったらしい。ロープは私を引き留めようとまっすぐに張り、その先についているわたしの首はきゅっと絞まった。
痛いな。
苦しいな。
かなしいな。
首にきつくなる堅いロープの感触。
うさぎのピエロもこうやって死んだのかしら。
涙が空にのぼるのを見ながら、そんなことが頭をよぎった。
そのとき、誰かがわたしの腕を強くつかむ。
王さまの手だ。
ぶらぶらと足下もなく、わたしは王さまの手を命綱に宙に不安定に揺れる。
「余は……もう処刑はやめる……」
苦しそうにあえぐ王さまの声が頭の上から聞こえる。
見上げれば小さな子どもみたいに顔をくしゃくしゃにした王さまがいた。
「もう、首を吊って死ぬうさぎはいらぬ」
王さまの手は震えていた。だけど、けっしてわたしから手を離さない。
ポタッ。
最初のコメントを投稿しよう!