第1章

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今から十年ほど前のこと。 あるところに、一人の男がいました。 男には、ある秘密がありました。 有名大学を主席で卒業した男は一流企業に勤め、社内の評判も良く、出世コースをまっしぐらに走りました。 政治経済のみならず、医療や雑学なんでもござれ。そんな男の、今や密かな趣味とも言える秘密でした。 それは、ある能力のことでした。 男がその能力に気付いたのは、高校三年、受験真っ只中のある日の深夜。 その日の学習塾での模擬試験、男の結果は凄惨なものでした。 問題、解答とのにらめっこに、男の頭はパンク寸前。 いえ、既にパンクしていたのかも知れません。 自分は同じ問題を、一体何度解いただろうか。 同じ問題に、どれだけの時間を割いているのか。 一度で覚えることができたなら、これほど効率的なことはない。 そう考えた時、男の脳裏に、ある閃きが降ってきたのです。
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