2人が本棚に入れています
本棚に追加
今から十年ほど前のこと。
あるところに、一人の男がいました。
男には、ある秘密がありました。
有名大学を主席で卒業した男は一流企業に勤め、社内の評判も良く、出世コースをまっしぐらに走りました。
政治経済のみならず、医療や雑学なんでもござれ。そんな男の、今や密かな趣味とも言える秘密でした。
それは、ある能力のことでした。
男がその能力に気付いたのは、高校三年、受験真っ只中のある日の深夜。
その日の学習塾での模擬試験、男の結果は凄惨なものでした。
問題、解答とのにらめっこに、男の頭はパンク寸前。
いえ、既にパンクしていたのかも知れません。
自分は同じ問題を、一体何度解いただろうか。
同じ問題に、どれだけの時間を割いているのか。
一度で覚えることができたなら、これほど効率的なことはない。
そう考えた時、男の脳裏に、ある閃きが降ってきたのです。
最初のコメントを投稿しよう!