第1章

4/4
前へ
/4ページ
次へ
気を取り直して再び机に向かいましたが、さっきまでにらめっこをしていた問題用紙も解答用紙も、そこにはもうありません。 やれやれ、まったく、馬鹿なことだ。 自嘲気味に笑みを溢すと、その日はもう、休むことにしたのです。 ところが。 眠ろうとベッドに身体を横たえ目を瞑るのですが、先ほど平らげた問題用紙、解答用紙の内容が、頭に浮かんでなかなか寝付けません。 可笑しなことをしたせいで、身体を休めることも難しい。やれやれ…おや? 男は跳ね起きました。 自分の頭の中に、あんなに苦戦した数学の証明も、何度も何度も読み返さなくてはならなかった英語の長文も、問題の一問一問までなにもかも、一言一句はっきりと、頭に焼き付いているのです。 まさか。 男は頭に焼き付いたそれを、片っ端から夢中で唱えました。 何度も、何度も。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加