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「なんですか、この人形?」
不格好なうさぎの人形が机の上におかれていた。前歯がやたらと出ていて、おなかがたっぷり大きい。
「まぁ、無知なうさぎは黙って見てるがよい」
得意げに王さまが言って、うさぎ人形の背中部分にあるねじを回す。台の上に置いた次の瞬間、タキシード服のうさぎ人形はシルクハットを持っている片腕をソクッと上げる。
「『チャオ!』」
うさぎ人形はあいさつした。
「どうだ。かわいいだろう」
王さまが聞いたので、わたしはじっとうさぎ人形を見つめた。
「『おいら、うさぎだヨ。クフフフフ!』」
うさぎ人形はかわいいというよりも奇妙な鼻声で笑いながらトコトコ歩く。
「ぜんぜんかわいくないよ」
そう言ってわたしは人形から離れる。この人形があまり好きになれない。
「そうか。この人形、おぬしによくにているではないか」
王さまにそう言われてますます嫌いになった。
「どこが! ちっとも似てない」
とわたしは答えた。
でも、王さまはこのうさぎ人形が気に入っていた。
珍しく飽きもせずに人形が倒れるたびにねじを回していた。
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