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「あんまり長居は出来ないけど……」
意味を理解する間もなく、思考を停止させるのは、私の口許をじわりと湿らせてくる、さとるくんの熱い口唇。
今度は、ちゅ、と音を鳴らしながら、口唇が吸われた。
自棄に響いたその音に、身体中の細胞が欲情に芽吹く。
開放を求めるさとるくんの熱に従い、薄く開いていた口唇は素直にさとるくんを受け入れた。
「……ん……」
机上の手同様、しっかりと絡み合う熱い舌に、夢の続きを見る。
「ぁっ……」
誰もいない密室で、溢れる二人のとろとろとした欲情の音を響かせ、
互いの想いをたしかめ合う甘い甘い口づけで、夢のような時間を作る。
立場もモラルも今だけは、黄昏色に染まる空間の眩しさの影に、
……ひっそりと押しやった。
.
(おしまい)
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