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「ごめんね。気持ちは嬉しいけど……俺、すきな人、居るから」
俺を見上げていた女の子の目が、羞恥の色ににわかに潤みを含ませる。
もう一度、ごめんね、と語りかけると、うつむいてしまった頭は、小さくふるふると頭を振った。
今日は風がなく、夕方でも西陽の当たる校舎裏は暖かい。
いつもならこの時間には、渡り廊下で少しの時間を潰し、突き当たりの廊下を通る彼女の姿を、一目見てから帰宅している頃だった。
昼休みに一度見かけただけで、今日はそれ以来、大きな瞳を見ることなく、
放課後、渡り廊下にやって来た一年生の女の子に呼び出され、……ここに至る。
「すみませんでした……貴重なお時間ありがとうございました……っ」
がばっと律儀にお辞儀をした女の子は、俺を取り残してぱたぱたと去って行ってしまった。
ふ、と小さく溜め息を吐き校舎の壁に寄り掛かると、
「……先生ー。神園先生ー……?」
頭上から女子生徒らしき声が小さく聴こえてきた。
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