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するりと私の頬を包んでくるさとるくんの温かな掌に、顔の熱が急騰する。
「型、ついてる」
「……さとるくん……あの……」
柔らかく細められた瞼の隙間から覗く黒の瞳は、そこにも橙色を差しながら、いつもの魔力で私を拘束する。
動悸を煽られる胸が愛しさに苦しくなりながら、さとるくんの向こう側へと、ちらりと視線を向けた。
開ける視界のたくさん並んだ机の奥に、図書室の入り口横の貸出しカウンターが見える。
距離は離れているけれど、その中に居る眼鏡の女の子と、ぱち、と目が合った。
「さとるくん……」
「……ん?」
首を傾げるさとるくんの親指が、きゅ、と頬を撫でる。
耳に向かって走る小さな疼きに肩をすくめながらも、図書委員の彼女の視線が恥ずかしげに外されると、
ざわざわとした背徳感が、心臓に嫌な重みを与えてきた。
「……駄目だよ……こんなとこで、こんな風に……」
「なんで?」
「なんで、って……」
だって、私達……
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