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「部活早めに終わったから渡り廊下行ってみたけど、先輩居なかったから。
まだここに居るのかなって思って来たら、案の定気持ち良さそうに寝てるし」
そうだ、私……
今年に入って、受験勉強に本腰入れてて……
夏休みも全然デートしてなかったから……
うたた寝をしてしまっていた私は、さとるくんを待たせていたらしく、さっき『我慢してる』と言った言葉の真意に、押しやっていた掌の力を緩めた。
そうだった。
せめて帰りは一緒にって……
「ごめんね、さとるくん。……待たせちゃって」
さとるくんから机へと向き直り、広げていた本を閉じて慌てて帰り支度を始めると、……顔の横に掛かってきた髪が、そろりと耳に掛けられた。
「いいよ……。寝顔、見れたし……」
「……っ」
びくんっと身体を飛び上がらせたのは、優しく耳に触れたさとるくんの指の感触だけではなく、
不意に耳に寄せられた口唇の熱と、直接鼓膜を揺らしてきた柔らかな声の艶かしさだ。
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