第1章

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「有罪は、ほぼ確定したようなものですな」  裁判長の声が法廷に響きわたった。  裁判長は書類を指ではじくと、まっすぐに被告人席を見下ろした。 「被告人エスカレーター。言い残したことはあるかね」  そう厳かに言い放つ。  説明を加えるのなら、被告人の立ち台にいるのはエスカレーターではない。「えすかれーたー」とひらがなで書かれた紙の札が立っているだけである。  だから当然、被告人からの返答はない。  それでも裁判長は数秒ほど答えを待つ間を空けた。  法廷はしーんと静まり返っている。 「なにもないようですな。では、検事」 「はい。エスカレーターは陛下を引きずり回した挙げ句、道ばたに放り出した罪で起訴されている。これは事実であり、証拠として、私はその時の状況がわかる防犯カメラの映像を確認した。みなさまにも見ていただきたい」  検事が片手をあげると、そこに天井からスクリーンが降りてきて、法廷内の明かりが落とされた。  ほどなくしてスクリーンに映像が流れ始めた。
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