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それは三日前の映像だった。王さまがエスカレーターに乗ろうとする。だが、一歩目でつまずき、すってんと転ぶ。その後ずりずりとエスカレーターに倒れたまま運ばれてゆき、後ろから歩いてくる人のじゃまになっている姿が十分ちかく流れた。
その後に、法廷にまた明かりがついた。
「この映像を見てもわかるとおり、やはり、エスカレーターは有罪だ」
これで決まったとばかりに検事は笑う。
法廷も有罪決定の雰囲気に包まれていた。
裁判はまもなく終了するだろうとみんなが思っていた。
そんな時に。
「そうかなぁ?」
首をかしげて発言をしたのは女の子だった。
頭の左右に長い髪の毛がゆれている。そして、ピエロの赤い衣装を着ていて、頭のてっぺんには白いうさぎの耳をつけていた。
「私はそうは思わないけどなぁ」
「なんだ、このうさぎのピエロは! ここはピエロの戯言を聞く場ではないぞ!」
裁判長が眉を逆立ちさせて怒鳴った。
すると、自分が転んだシーンを流すスクリーンを見ていてそれまで不愉快そうだった王さまがブルーサファイヤの瞳で裁判長を見据えた。
「裁判長、それは余のうさぎだ。発言を許す」
主人である王さまの許可が出たので、王さまのうさぎは思っていたことをつらつらと述べ始めた。
「エスカレーターに罪はないと思うよ。だって乗れない王さまがいけないんじゃない」
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