0人が本棚に入れています
本棚に追加
そこまで聞くと、王さまがうさぎをにらんだ。
「そんなにかばうとはなんだ。主人よりエスカレーターか。エスカレーターはおまえのなんだ。おまえの友人か? 命の恩人、はたまた人生の師匠か?」
「うーん……どれもちがうかも」
「ならば、なぜかばう。ここでかばうなら、主人の余をかばうべきだろう」
「そう言われればそうかもしれないけど。でも、エスカレーターは悪くないと思うし」
「エスカレーターは余を転ばす。これは罪に値する!」
「罪じゃないよ。だってエスカレーターに悪気はないもの。それで転ぶというのなら、王さまがエスカレーターに乗らなければいいじゃないの」
静かに、傍聴席からぼそぼそと会話を交わす声が複数した。
うさぎの意見にたしかにそうだ、と思ったものがいるらしい。
だが、王さまは違った。
「余は最近流行の乗り物を乗りこなしたいのだ!」
エスカレーターを乗り物というのかどうか。
またも新しい議論が必要なようである。
傍聴席は普段よりもざわついている。
最初のコメントを投稿しよう!