第1章

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 そこまで聞くと、王さまがうさぎをにらんだ。 「そんなにかばうとはなんだ。主人よりエスカレーターか。エスカレーターはおまえのなんだ。おまえの友人か? 命の恩人、はたまた人生の師匠か?」 「うーん……どれもちがうかも」 「ならば、なぜかばう。ここでかばうなら、主人の余をかばうべきだろう」 「そう言われればそうかもしれないけど。でも、エスカレーターは悪くないと思うし」 「エスカレーターは余を転ばす。これは罪に値する!」 「罪じゃないよ。だってエスカレーターに悪気はないもの。それで転ぶというのなら、王さまがエスカレーターに乗らなければいいじゃないの」  静かに、傍聴席からぼそぼそと会話を交わす声が複数した。  うさぎの意見にたしかにそうだ、と思ったものがいるらしい。  だが、王さまは違った。 「余は最近流行の乗り物を乗りこなしたいのだ!」  エスカレーターを乗り物というのかどうか。  またも新しい議論が必要なようである。  傍聴席は普段よりもざわついている。
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