0人が本棚に入れています
本棚に追加
「王さまは電車にだって、バスにだって乗れるじゃない。三輪車だって、一輪車だって自転車だって乗れるじゃない。ショベルカーだってブルドーザーだって乗れるよね。十分乗り物にのれるんだからいいじゃないの」
「いや、余は一輪車には乗れないのだ……」
王さまが恥ずかしそうにささやいた。
また法廷がしーんと静まり返った。
「……そういえば、陛下。自動車免許をとったとか、とらなかったとか」
控えめにそれまで立っていた弁護士が手をあげて発言する。
「自動車ではなく自転車の免許をとろうとしたのだ。でも、自転車と余は相性が合わなくてな。金輪際、乗らないことに決めた」
自転車の免許なんてそんなものありませんとは誰もいわなかった。王さまの機嫌をそこねたら、明日にでも絞首刑になんてこともある。
みんなそこまでバカで命知らずではなかった。
「この際、エスカレーターを処刑……いや」
裁判に飽きてきたのか王さまが大きなあくびをした。
「もういいじゃない、王さま。こんな裁判やめてお昼寝にしようよ。ちょうど二時。寝るのにいい時間だよ」
と、うさぎが掛け時計を見て教えた。
「そういえばそうだな。どうりで眠いはずだ」
王さまが目をこすった。
「陛下、まだ判決が出ておりません!」
「そんなの無罪でいいじゃない」
うさぎが言うと、裁判長が真っ赤な顔をして怒りだした。
最初のコメントを投稿しよう!