第1章

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「王さまは電車にだって、バスにだって乗れるじゃない。三輪車だって、一輪車だって自転車だって乗れるじゃない。ショベルカーだってブルドーザーだって乗れるよね。十分乗り物にのれるんだからいいじゃないの」 「いや、余は一輪車には乗れないのだ……」  王さまが恥ずかしそうにささやいた。  また法廷がしーんと静まり返った。 「……そういえば、陛下。自動車免許をとったとか、とらなかったとか」  控えめにそれまで立っていた弁護士が手をあげて発言する。 「自動車ではなく自転車の免許をとろうとしたのだ。でも、自転車と余は相性が合わなくてな。金輪際、乗らないことに決めた」  自転車の免許なんてそんなものありませんとは誰もいわなかった。王さまの機嫌をそこねたら、明日にでも絞首刑になんてこともある。  みんなそこまでバカで命知らずではなかった。 「この際、エスカレーターを処刑……いや」  裁判に飽きてきたのか王さまが大きなあくびをした。 「もういいじゃない、王さま。こんな裁判やめてお昼寝にしようよ。ちょうど二時。寝るのにいい時間だよ」  と、うさぎが掛け時計を見て教えた。 「そういえばそうだな。どうりで眠いはずだ」  王さまが目をこすった。 「陛下、まだ判決が出ておりません!」 「そんなの無罪でいいじゃない」  うさぎが言うと、裁判長が真っ赤な顔をして怒りだした。
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