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耳打ちされたあっきーな先生が、悟流にナニを言われたのか、恥ずかしげにそっぽを向く。
そこを覗き込む男の目許は意地悪で、……とても愛おしそうだ。
可愛くて、好きで、仕方ないんだろうな、悟流のやつ……
こんな風に極普通の恋人同士みたいに寄り添う姿は、あまりに新鮮で、
……あまりに自然すぎる光景だ。
これまでの距離をまるで感じさせない、ずっと今までもそうであったかのような二人。
なんだかとてもほっとする二人の雰囲気に軽く息をつき、ソファの背もたれに身体を預ける。
横目に周りを見渡すと、いつの間にやら二人に対するほとぼりも落ち着いたクラスメート達は、各々の思い出話と次々と順番の回ってくる歌を代わる代わる楽しんでいた。
ぐるりと見回した視線を二人まで戻すと、あったかそうなマグカップを飲み干したあっきーな先生と目を合わせた悟流の口が、行こうか、と動く。
小さく頷くあっきーな先生と一緒にこちらに振り向いてくる悟流は、目配せで引き上げる意思を伝えてきた。
ちょうど曲が終わったところで、二人が同時に立ち上がる。
「悪いけど、お先に」
悟流の言葉は、えー、と上がる軽いブーイングを受ける。
それでも、にこやかに「またなー」などと明日も続くような別れの言葉を口にする皆に、あっきーな先生がとても穏やかに柔らかな口調で言った。
「お邪魔しちゃってごめんなさい。皆が素敵なキャンパスライフを送れるように、祈ってるから。
……今日は卒業おめでとう」
満足げに微笑み合いながら退室していく二人の相変わらず固く繋がれたままの手元。
薄暗い部屋から、明るい廊下のスポットライトの下に歩み出るシルエットに、なぜだか胸が痺れた。
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