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寄り添う二人の小さくなっていく後ろ姿を、薄暗がりの街に照る明かりの中に見送る。
ときどき隣を見下ろす悟流の、普段よりも一層垂れ下がる目尻を、軽く鼻で笑った。
前カノんときには、あんな顔したことなかったよな……
結構クセのある女だったし、……もっと、淡白だった気がする。
「……なんて、比べてもしょうがねーか」
呟いた独り言は白いもやに変わって、寒空に漂い消える。
あっきーな先生との馴れ初めなんて詳しく聞いたこともないけど、そんだけ骨抜きにさせるような何かがあったんだろう。
……わかるけどな、そんだけ構いたがるのも。
年上の女ってのは、やたら甘えたがってるくせに、それを隠して変に大人ぶろうとするから、……放っておけないんだよなー。
「……」
“年上の女”に、ふと頭を過ぎった顔。
す、と吹いてきた冷風に、「さむ」と小さく身震いしてスラックスのポケットに手を突っ込むと、
中で触れる携帯の感触に、さっきまでオレを恋しがっていた物腰柔らかな声を思い出した。
「今日も冷えるからなー、しかたねーなあ」
取り出した携帯の着信履歴にリダイヤルを押しながら、店の方へときびすを返した。
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