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モラルと背徳感の壁を取り払われた心から、恥ずかしげもなく想いを吐露しきると、つい今まで、熱くたぎらせていた空気が、す、と動きを止めた。
「あきなさん」
「……うん?」
私を呼んでくれる愛おしい声に、素直に応えると、
「そんなこと言って……明日、学校行けなくなっても、知らないから」
「え……?」
いつかのように軽々と私を抱き上げるさとるくん。
初めて逢った日、ふたたびの再会をした日……
さとるくんは、運命とも呼べるあの日と同じ位置から、同じような横顔を見せてくれて、
『俺でよかったですよ』
『……こういうことしちゃ、駄目』
ぎりぎりで自分を制してくれたあのときとは全く逆の気持ちで、
「俺の自制心、振りほどいたの、あなただからね」
すでにその場所を知っている暗がりに潜む部屋の扉を、とろけそうに目元を細めて開け放った。
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