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. 何かに引き上げられるように、ふ、と瞼を開けると、一瞬だけぼやけて見えた視界が、自分の部屋を認識する。 奥に見える入り口の扉に向かって部屋を両断するように挿す光が、カーテンから入り込む朝陽だということは、すぐにわかった。 同時に、……背中から私を抱きしめるたくましい腕が、 とてもだいすきな人のものだということも。 ベッドで横たわったまま顔だけで振り返ると、長い睫の伏せられる目元に、黒の前髪が艶やかにかかっていた。 瞼は閉じられていて、私を映してはいないのに、綺麗な寝顔を間近に見ただけで、 黒の瞳が私を見つめてくれたときと同じに、胸が、きゅう、と身震いする。 つられて、身体の甘やかなだるさに疼きを誘われる下腹部が、昨夜の情事を彷彿とさせた。 ……私、やらしー…… 「……」 いつもなら、すぐに私の意を察知する黒の瞳が、今は羞恥を煽ってこないのをいいことに、昨夜の余韻を手繰り寄せて、逸る鼓動に素直に浸る。 さとるくん…… 『……あきなさん……』 何度も、何度も、私の名前を口ずさんでくれた柔らかな口唇。 そこから紡ぎだされる自分の名前が、あんなにも身体をたぎらせる熱を持っていたなんて、知らなかった。 まだ私を呼ぶ熱を引きずる鼓膜に、身体の芯を震わせていると、 小さく喚く電子的な音が、遥か遠くから幸せの余韻を邪魔してきた。
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