チギリ~spring~

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「悟流がみんなに話あるからって、それ見届けるまでは動けねーんだよな」 物分りよさげに、うん、わかった、と納得する声は、電話を切る直前までひしひしと淋しさを醸しながらも、それをひた隠し、あくまで気丈に振る舞って見せていた。 しかたねーなー、と溜め息を吐きながら、携帯をポケットに仕舞うと、 部屋へ振り返ったところで、今一度携帯が振動した。 今度こそ期待した名前を画面に見とめて、 「ちょっとぉ。悟流くーん、何やってんのー。超待ちくたびれたんだけどー」 ふてくされたように電話に出た。 ごめん、とすぐさま耳元で謝る親友の素直さには、本当に感心する。 「え、何、もうそこ? 部屋は206……てか、オレ出てくるわ。受付で待ってて。……はいよー」 何をしていたんだか、ナニをヤっていたんだか…… いらん想像を膨らませ、ニヤつきながら踵できびすを返した。 .
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