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吹き抜けの二階から、だだっ広いカラオケ店の一階受付ロビーを見下ろすと、「いらっしゃいませー」とカウンター内の店員に歓迎される二人組を入り口に見つける。
白のピーコートに長い黒髪を流す美人が、うちの制服を着た男子生徒に手を引かれて、ロビー中央に鎮座する階段の前にやってきた。
「悟流っ」
二階通路から広いロビーに声を響かせ呼びかけると、二つの黒い頭が同時にこちらを見上げてきた。
「悪い、遅くなった」
手を振るオレにすかさず謝罪をしてから、すぐに悟流が見下ろしたその隣。
大分陽も傾き、外は相当寒かったらしい。
鼻を赤くしたあっきーな先生が、何やら悟流に向かって口を開いていた。
……おーおー、早速見せつけてくれてんじゃん。
しっかりと手を繋いだ二人の姿に、なんだか頬をくすぐられたようなこそばゆさが走る。
妙な気恥ずかしさと湧き出る喜ばしさに、口許の緩みは治まらなかった。
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