562人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
*
「佐伯くん、ごめんね。私が待たせちゃってたの……」
二階まで上がってくるなり、すぐにあっきーな先生は申し訳なさげに眉を下げる。
「いやいや、あっきーな先生が謝ることないって。逆にごめんね、二人っきりで居たいのに、悟流のわがままに付き合わせちゃって」
「ううん、そんなこと……」
どこに羞恥を覚えたのか、なぜだか頬を染めるあっきーな先生は、
「あの、……卒業おめでとう、佐伯くん」
あらたまった様子で、悩殺なスマイルを添え律儀に祝いの言葉をくれた。
「おー、ありがとうござい……」
「リョウ」
「ま、す」
「部屋どっち」
「……あ? あー、そっち左側の……」
ことごとくオレの言葉を遮り、むす、とあからさまな嫉妬を見せつける悟流。
おー、こわ。
いつもは澄ました顔で気取ってるくせに、あっきーな先生のことになると途端に目の色を変えやがる。
自分以外に向けられた悩殺スマイルが、よっぽど気に食わなかったらしく、
はてなマークをぷわぷわと抱えるあっきーな先生の手を、ぐいと引っ張って歩き出した。
「……」
ガキか、おのれは。
.
最初のコメントを投稿しよう!