チギリ~spring~

7/13
561人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
ぽかんと口を開けたままのナオキの手から滑り落ちるマイクが、そのまま床に叩きつけられると、 ごととんっ、とエコーの効いた鈍い音と同時に、ぎん、としたハウリングがスピーカーから不快に鳴った。 周りのメンバーもナオキの異変に気づき、一斉に振り返ってくる。 皆の視界を邪魔しないようにとその場からはけ、見渡す彼らの反応は、……全員がナオキと一様だ。 うわー、想定どおり過ぎる反応。 超ウケる。 むなしく空のオーケストラだけが元気に鳴り喚く小部屋で、全員の視線はオレの後方へと一点に会する。 振り向かずともわかる、視線を集めるのは、……二人の手元。 「ど……」 次第に口をわなわなと震わせ、真正面をぷるぷると指差すナオキは、 「どういうことだよーっ!!」 先陣を切って、おそらくここに居る全員の気持ちを、カラオケの伴奏を地で超える大絶叫で代弁した。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!