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「あ、あれから五年後……」
婚約者のタケシは静かに語り出した。
「何が?」
「ああ。ボクが君に告白をしてからちょうど五年が経ったわけだ」
「あのさあ、色気のある話するのに、それちょっと語り出しが重すぎない?」
ちょっと腰が砕けそうになるワタシ。
「あれから五年の月日が流れた」
「……」
「あ、あ、あふう……」
「あ?」
ふたつのことがピンときた。
「アフター・ファイブ・イヤーズ?」
ワタシはピンと思いついたことを一つ言った。
タケシは頷き、
「よくわかったね。いや、違う!」
彼は拳を握りしめて反論した。
ワタシは腕を胸の前で組み、居ずまいを正した。
「はいはい。ちゃんと話は聞いてあげるわよ。ドンときなさい。さあ、あ!」
「愛してる!」
これだ。もう一つのピンときたこと。
「告白して五年後にまた言ってくれる約束だったものね。よくできました」
「結婚してくれ!」
「はい」
「子どもは三人!」
「えっ、ちょっと?」
「告白したあれから五年後、ボクはここまで言える大人になったンだ!」
「いやもうね、嬉しいやら、圧倒されるやら。これはまた五年後が楽しみね」
「それで――もがっ?」
その口をふさぐ。これ以上はまた五年後に聞こう。
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