絶望のその先

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よくある馬鹿げた約束だった。 出会った頃から男勝りだった親友に、小学校の卒業式で冗談半分で僕が言った言葉。 「泣き顔が不細工だな」 当時、大泣きしていた親友……その《彼女》に僕はそう言った。 ……泣いている彼女を見たくなくて。 ……笑っている彼女が好きだったから。 「うるさいっ! 絶対あんたより先に結婚するもん!」 それなのに彼女にそう言われた僕は堪らず言ってしまった。 「お前みたいなオトコオンナと結婚するやつなんかいるかよ」 (……僕の他には)って気持ちで。 そしたら彼女は、号泣した。 周りの目なんて気にせず感情のままに。 幼い僕は気付いていなかった。 女の子らしくすると、僕と一緒に遊んだり出来ない。 そんな風に思っていたなんて――彼女が僕に合わせて頑張っていたなんて考えもしなかった。 だから、慰めるというよりも、ただ泣き止んで欲しくて僕は冗談めかして言ったんだ。 【25歳になっても、お前が結婚してなかったら結婚してやるよ】 って。 「やくそく……だよ……っ……ぜったい……」 そう嗚咽を漏らしながら言った彼女の顔は今でも覚えてる。 溢れる涙をごしごしと消しゴムで消すように擦りながら……だけど頬は熟したトマトのようで、鳥がつついたように小さなエクボが浮かんでいたあの顔を。 無言のまま、卒業アルバムとペンを僕に押し付けて約束を書かせた事を。 ――だから僕は、心の片隅で期待していた。 十年以上の時が過ぎ、25歳まであと数日になっても。 彼女の誕生日が過ぎたら、黙って引っ越した彼女が会いに来てくれるかもしれない。 ――そう思っていた。
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