7月

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「佐々木さん、大丈夫?」 少し時間をおいて、佐々木さんから返事が返ってきた。 「大丈夫じゃない……」 「ごめんなさい。当たり前だよね。 何があったか教えてくれる? つらかったら後でいいから」 佐々木さんの悲しげな声に胸が痛くなる。 だけど、何があったのか知りたい。 次は私かもしれないから。 「私…… 昨日の夜、すぐに寝てしまって、物音に気づいて、目を開けたら身体が椅子に拘束されていたの。 逃げようとしても、ロープがキツくて逃げれなかった。 小さい電球の光で、真っ黒の目出し帽をかぶっている男が見えた…… だけど、そこまで。 急に真っ黒になって、身体に何か虫みたいなものが這っていて…… それは、パジャマの中にも入ってきて…… 気持ち悪くて…… その虫がいなくなった後も、ずっと身体を這う感じが残っていて、泣き続けた」 なんてひどい…… 佐々木さんにかける言葉が見つからなかった。 身体に這う虫。 想像しただけで、吐き気がする。
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