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少年は奴隷だった。
父はいない。
母は同じ奴隷であったが、ある日飼い主が催した射撃ゲームの的にされて殺された。
少年はまだ10歳であった。
翌日、母親の亡骸を掃除するように言われて、その時に死んだことを知った。
身体は銃痕で無惨なものとなっていた。
母は生前言っていた。
決して人を恨んだり、憎んだりしてはいけないと。
恨んだりすればやがて、孤独が訪れるのだと。
だからあなたは愛をもって人に接しなさい。
そうすればきっと、あなたが嫌いであった筈の人もいつしかあなたを理解してくれるでしょう。
そうすればきっと、あなたに孤独は訪れないでしょう――。
母は優しい人だった。
けれど、悪い事をすれば叱る、賢明な一面もあった。
だから奴隷という身分を恨んだりはしなかった。
――だが、その日ばかりは恨んだ。
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