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おそらく……いや、間違いない。
これは飛竜の羽ばたく音だ。
けれど、こんな大きな翼音は今までに聞いたことがない。
おそらく相当魁偉な竜なのだろう。
突然、天井からどおっと灼熱が降り放たれてきた。
それが、少年の目の前、横一線を通り過ぎていった。
「あ、ああ……」
見ているだけで頬が火傷しそうだと感じた。
馬は皆、耐えがたいというような悲鳴と共に焼死した。
火炎が通り過ぎたと同時。
天上から飛竜の咆哮が響いた。
足元の小石が浮いてしまいそうなほどの怒号。
聞いているだけで背筋は伸びて、全身に鳥肌が立った。
火炎の放たれた跡は形もないような炎となっていた。
あの飛竜、一体どれほどの大きさなのだろう。
想像だにできない。
そう思い、見上げたと同時。
紫色をした煌月に竜の影が覆った。
見た瞬間、少年は瞠目して息をのんだ。
大きい。
とてつもなく大きい。
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