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少年はこの光景を言葉なく、空が蒼茫と色づくまでぼんやりと眺めていた。
母を殺された恨み、一時は復讐に囚われた少年であった。
だが、それが叶ったところで、今あるのは喜びでも達成感でもなく、絶望。
ただそれのみであった。
いつか母が言った言葉を思い出した。
恨んだりすればやがて孤独が訪れる――。
「うっ……ううっ……!」
少年は泣いた。
そうか、きっとこれは母の教えに背いた報いなのだろうと、そう思った。
朝陽が顔を出し始める頃、やがて炎は消えた。
あちこちで煙はたっているが、生き残りはいるだろうか。
少年は村の中を歩いて回った。
――だが、見つかったのは血の気もないような焼死体ばかりであった。
朝陽が昇った。
けれど、この村でその陽を拝めたのは少年だけである。
「……」
少年の眼はすでに生気を失っていた。
これから生きていこうと思う希望がない。
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