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 そして、今日一日が始まる。 「いらっしゃいませ!」  開店直後、スーツ姿の男が入店してきた。男はカウンターテーブルに座り、モーニングメニューの珈琲セットを注文した。 「お待たせしました」  注文通り、珈琲セットのトースト、ハムエッグ、チキンサラダ、ブラックコーヒーを男の前へ出す。  店自慢の珈琲から口にする男。 「美味しい珈琲だね」  そう言う男の顔は綻んでいた。客に「美味しい」と言われること、それこそ最高の褒美だと謙次は考えている。だから、その一言を聞き心が嬉しさで一杯になった。 「ありがとうございます!」  すべて完食し、代金を払い男は満足そうに店を出ていった。見送った後、食器を片付けテーブルを拭く。 「おーい、謙次。朝飯くれぇ」  勢い良くドアを開け、常連客であり友人の大学生、三島陽希(みしまはるき)が入ってきた。  
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