scene.4

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反省している時に出る、斎の癖。 小さい頃からずっとそうだった。自分が悪かったと認め、謝ろうとする前に、斎はいつも私の髪をクシャクシャと撫でる。 髪型が崩れるからやめてほしいと何度も言っているのに、癖になってしまっているからなかなか直らない。 私は今ではもう、ほぼ諦めていた。それに、こうやって撫でられることは、実は嫌いじゃない。 「悪かった。あいつらは…」 「ん?」 「基本いい奴らだが、クセのある奴ばかりだから、あまり舞のことを知られたくなかった」 「?」 私の頭にはクエスチョンマークが飛び交っていた。 クセのある仲間達に私のことが知れたからといって、何か不都合があるんだろうか? 「何?私を弱みにからかわれるとか?!」 いや、そんなことで動じる斎ではない。 自分で言っておいてなんだけど、そんなことくらいでワタワタする斎ではないのだ。 私とのことをからかわれるなんて、それこそ小学生の頃が一番酷かったくらいで、その時でさえ斎は飄々としていた。 だとすると、なんだろう?本気でわからない。 私は皆の顔を思い出していった。 生意気そうな笑みを浮かべる南条君、明るく元気な菊池君、優し気な雰囲気の小石川君、冷静で淡々とした口調の進藤君、そして。 「どうやら、僕達に名前を教えるのが嫌なほど、大事な幼馴染みたいだね」 含みを持たせたアルカイックスマイルの藤代君の言葉が、突然頭に浮かぶ。 続けざまに、南条君の言葉も蘇ってきて、思わずボワッと頬に熱がこもった。 「篠宮部長のもんでしょ?」 ──ひょっとしたら、ひょっとする? 皆を…牽制、とか? ───いやいやいや!! いきなりブンブンと首を横に大きく振る私を見て、斎が驚く。 そしてすぐさま、呆れたように小さく笑った。 その顔を見て、私もつられて笑ってしまった。 なんだろう…。 まだ、はっきりさせなくてもいいのかな。 この距離感が楽しいのかな。ホッとするのかな。 いつかこの関係が変わってしまう時がくるのかもしれない。 それでも今はまだ、このままで──。 二人で笑いあえるこんな時間。 今はそれが一番楽しい、そして大切。 でも、次に皆に会えた時には、ちゃんと自己紹介できるといいな。 そんなことを思いながら、私は歩調を合わせてくれる斎の顔を見上げ、また笑った。
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