scene.4

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「何だ」 「この人このまま一人で帰したら、また変な奴らに捕まるんじゃないッスかね」 「…」 いや…さすがに一日に二度も三度も変な輩に捕まるほど、どんくさくはないつもりなんだけど…。 私は小声でハハハ、と乾いた笑いを浮かべる。 「そうだね。何しろ、その制服は目立ちすぎる」 「そうだよねー!俺、神女の子に会ったのなんて初めて!やっぱ制服可愛いよなーっ」 菊池君がにぱっと笑って私を覗き込む。 その笑顔は本当に素直で、思わず可愛いなんて思ってしまったり。 こういうところが、女の子達にウケているんだろうな。 「幸也、あまり彼女に近づくと大変だよ」 「へっ?!」 はて?どういうことなんだろう? 「僕達も丁度帰り道なんだし、送ってあげれば?家も近いんでしょ?」 「…」 藤代君の提案に、進藤君も頷いた。 「それがいいんじゃないか。こっちは気にしなくていいから」 「…」 斎は無言のままで、益々眉間の皺が増えていっている。 なんでだろう? 「なんか、藤代先輩と進藤先輩がそう言うと、よけい気になりそうッスね」 「心外だな、南条」 「酷いなぁ、祐」 今の南条君の一言で、このメンバー間の人間模様が少し垣間見えたような気がする。 斎の眉間の皺の訳が、なんとなくわかったかもしれない。 「斎、私大丈夫だけど」 「…送って行く」 斎が観念したように言った。 溜息をつく斎を見て、私は苦笑する。 やっぱり強豪と言われる人達。皆、曲者揃いだよね。 そんなメンバーをまとめるのだから、斎も結構苦労しているのかもしれない。 私は皆の顔を見て、またにっこりと笑んだ。 「助けてくれてありがとう!じゃ、斎借りていくね」 「いやいや、どーぞ、どーぞっ!」 菊池君が楽しげにそう言うと、藤代君も追い討ちをかけるように笑いながら言った。 「いや、借りてたのは僕達の方だから」 その会話を聞いて、斎が菊池君と藤代君をジロリと見る。 「俺は物か」 「冗談、冗談。じゃ篠宮、また明日」 「…あぁ」 藤代君は斎を宥めた後、皆を促す。 その時ふと、少し離れた所に南条君がいるのが見えて、私はそっと近づいた。
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