scene.4

8/10
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「さっきはホント、ありがとね」 「別にいいッスよ」 「乗ってくれて助かった」 「?」 不思議そうな顔をする南条君に、私は説明する。 「ほら、あいつらが私と南条君を誤解した時」 「あぁ…」 合点がいった、という顔をして、南条君が笑った。 「“人のもんに手、出すな”ってやつッスか?」 「そうそう、それそれ」 「別に、ホントのことだからいいんじゃない?」 「は?」 南条君の言葉に、私は目を丸くする。 何、それは? 鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている私を見て、南条君がまた笑った。 「だってあんた、“人のもん”だし」 「…は?」 「篠宮部長のもんでしょ?」 「!!!」 な、何を言ってるの、この子はーーーーっ!!! 「だから、そのまま言っただけだけど」 「あの、南条君…?」 「おーい、南条ー!何やってんだぁーっ」 「今行くッス!!」 菊池君に呼ばれ、南条君が皆の方へ駆け出そうとした時、彼は再び私に向き直ってニヤリと笑んだ。 「あんたはどうか知らないけど、部長はそう思ってるんじゃない?」 「…」 私が二の句を継げないでいると、南条君はクイと口角を上げて、今度こそ皆の所へ駆けていった。 …とんだ爆弾を落としていってくれたよ!南条君の馬鹿ーっ!! 「どうした?」 「え?あ…えと、何でもないっ!!」 いや、明らかに挙動不審だしっ! でも、動揺が収まるまでは勘弁してほしい…。 心臓をバクバクいわせながら、私はチラリと斎を見上げた。 斎は何事もなかったように、スタスタと歩き出す。 「行くぞ」 「うん」 私は斎にバレないようにこっそりと深呼吸して、何とか平静を装った。 でも、なかなか収まってくれないこの動悸。 その日の家路ほど、斎を意識したことはなかったと思う。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!